• 東京医科大学病院医療連携機関
  • 第2種再生医療等提供医療機関

お気軽にお電話でご予約やお問い合わせください。

TEL.03-6807-4817

MENU

医師監修コラム

歯の神経とは?役割と「抜くとどうなる」を歯科医がやさしく解説

「歯の神経って、そもそも何のためにあるの?」と疑問に思ったことはありませんか。

虫歯が深いと診断され、「神経を抜きましょう」と言われて不安になった方も多いはずです。

痛みの原因として語られることが多い歯の神経ですが、実は歯を健康に保つために欠かせない大切な組織です。

この記事では、歯の神経(歯髄)とは何か、どんな役割を持っているのか、そして神経を抜くと歯にどんな変化が起こるのかを、歯科医の視点からやさしく整理してお伝えします。

読み終えるころには、ご自身の歯の神経を守る判断ができるようになり、いざ治療を選ぶときに落ち着いて向き合えるようになるはずです。


歯の神経とは?歯髄という組織の正体

歯の神経とは、歯科の専門用語で「歯髄(しずい)」と呼ばれる組織のことを指します。

多くの方は「神経」という言葉から、痛みを感じるだけの細い糸のようなものを想像されるかもしれません。

しかし実際の歯髄は、神経線維だけでできているわけではありません。

歯髄の中には、細い血管(毛細血管)やリンパ管、そして神経線維が一緒に通っており、これらが寄り集まって柔らかい組織のかたまりを作っています。

つまり歯の神経は、単なる「痛みのセンサー」ではなく、血液を介して歯に栄養を届ける「生きた組織」なのです。

歯の構造の中での歯髄の位置

歯は外側から、エナメル質・象牙質・歯髄という三層の構造になっています。

いちばん外側にあるエナメル質は、体の中でもっとも硬い組織で、歯の表面を守る鎧のような存在です。

その内側にあるのが象牙質で、歯の大部分を占めており、エナメル質よりはやわらかく弾力があります。

そして歯のいちばん奥、中心部の空洞に収まっているのが歯髄です。

歯髄から伸びた血管と神経は、歯の根の先端にある小さな穴(根尖孔)を通って、あごの骨の中の血管・神経とつながっています。

このように歯髄は歯の最も内側で守られながら、全身ともつながっている、いわば歯の「心臓部」といえる存在です。

歯の神経(歯髄)の役割とは?歯を守る3つの働き

歯の神経には、大きく分けて三つの大切な役割があります。

これらの働きを知ると、なぜ歯科医院が「できるだけ神経を残しましょう」と考えるのかが見えてきます。

役割1:歯に栄養と水分を届ける

歯髄の中を通る血管は、酸素や水分、カルシウムやミネラルといった栄養を、歯の内側から象牙質へと絶えず送り届けています。

この栄養補給があるからこそ、歯はみずみずしさと弾力を保ち、硬さと粘り強さを両立できています。

逆にいえば、神経を失った歯は内側から栄養が届かなくなり、まるで枯れ枝のように水分を失っていきます。

歯にとって歯髄は、植物にとっての根のように、生命線そのものなのです。

役割2:刺激や痛みを脳に伝える知覚機能

冷たい飲み物がしみたり、虫歯がズキズキ痛んだりするのは、歯髄の神経が刺激を脳に伝えているからです。

痛みと聞くと厄介なものに思えますが、これは歯に異常が起きていることを知らせてくれる重要な警報装置です。

もし痛みをまったく感じなければ、虫歯がかなり進行するまで気づけず、手遅れになってしまいます。

歯がしみる、痛むという感覚は、歯を守るための大切なサインなのです。

役割3:細菌や刺激から歯を守る防御機能

歯髄には、外からの刺激や細菌の侵入に対して歯を守ろうとする防御の働きもあります。

たとえば虫歯がゆっくり進むと、歯髄は刺激を受けた部分の内側に新しい象牙質(第二象牙質)を作り、細菌が神経まで届かないように壁を厚くしようとします。

これは歯髄が生きているからこそできる、自己防衛の反応です。

このように歯の神経は、栄養・知覚・防御という三つの働きで、歯を内側から長く支え続けてくれているのです。

歯の神経を抜くとは?抜髄という処置の意味

では、よく耳にする「歯の神経を抜く」とは、具体的に何をするのでしょうか。

歯の神経を抜く処置は、専門用語で「抜髄(ばつずい)」と呼ばれます。

これは歯の中の炎症を起こした歯髄を取り除き、神経が通っていた管(根管)の中をきれいに清掃・消毒して、薬剤で詰める一連の治療です。

一般に「根管治療」と呼ばれる治療の入り口にあたる処置でもあります。

歯そのものを抜く「抜歯」とは異なり、歯の根や見える部分は残したまま、内部の神経だけを取り除くのが抜髄です。

つまり抜髄は、歯を残すために行う治療であり、歯を失わないための最後の手段ともいえます。

どんなときに神経を抜くのか

神経を抜く判断がなされるのは、主に歯髄の炎症や感染が後戻りできない段階まで進んでしまったときです。

具体的には、虫歯が歯髄まで達して強い炎症(歯髄炎)を起こしている場合や、歯の神経がすでに死んでしまっている場合などが挙げられます。

また、歯にひびや亀裂が入って細菌が神経に達したケースや、重度の知覚過敏が改善しないケースでも、神経を抜く選択がとられることがあります。

大切なのは、神経は一度抜くと二度と元には戻らないという点です。

だからこそ、本当に抜く必要があるのかを慎重に見極めることが重要になります。

歯の神経を抜くとどうなる?歯に起こる4つの変化

神経を抜くと痛みから解放される一方で、歯にはいくつかの変化が起こります。

ここでは、抜髄後に歯がたどる代表的な変化を整理しておきましょう。

歯がもろく、割れやすくなる

神経を抜いた歯は、血管からの栄養と水分の供給が断たれてしまいます。

その結果、歯は内側から少しずつ乾燥し、しなやかさを失ってもろくなっていきます。

枯れた木の枝が簡単に折れてしまうように、神経のない歯は強い力が加わったときに割れたり欠けたりしやすくなります。

歯を失う原因として、虫歯や歯周病だけでなく「歯の破折」が大きな割合を占めることも知られています。

歯が変色して黒っぽくなる

神経を抜いた歯は、時間の経過とともに少しずつ茶色や灰色、黒っぽい色へと変色していきます。

これは神経や血管がなくなったことで歯の内部に色素が沈着し、内側からくすんでくるためです。

特に前歯の場合は見た目への影響が大きく、笑ったときに一本だけ色が違うことを気にされる方も少なくありません。

虫歯やトラブルに気づきにくくなる

神経を抜くと、その歯は痛みやしみる感覚を感じなくなります。

痛みがなくなるのは一見ありがたいことのようですが、これは異常を知らせる警報装置を失うことでもあります。

そのため、再び虫歯になっても痛みが出ず、気づいたときには歯の内部でかなり進行している、ということが起こりがちです。

神経を抜いた歯ほど、定期的なチェックが欠かせなくなるのです。

再び痛みや腫れが出ることがある

神経を抜いた歯でも、根の中に細菌が残ったり再び入り込んだりすると、根の先に膿がたまって痛みや腫れを引き起こすことがあります。

これは根尖性歯周炎と呼ばれる状態で、再治療が必要になる場合があります。

こうした再感染を防ぐためにも、神経を抜く治療は精密さが求められます。

神経を抜いた後の痛みや経過については、詳しくは「神経を抜いた後の痛み」をご覧ください。

歯髄炎とは?神経が炎症を起こしたときの症状

神経を抜くかどうかの分かれ目となるのが、歯髄炎という状態です。

歯髄炎とは、虫歯菌などによって歯髄に炎症が起きている状態を指します。

初期の歯髄炎は、冷たいものや甘いものがしみる、噛むと一瞬ズキッとするといった軽い症状から始まります。

この段階であれば、炎症が元に戻る「可逆性歯髄炎」であることも多く、神経を残せる可能性があります。

しかし炎症が進むと、何もしなくてもズキズキと痛む自発痛や、夜も眠れないほどの強い痛みが現れます。

ここまで進むと炎症は後戻りできない「不可逆性歯髄炎」となり、神経を抜く処置が避けられなくなることが多くなります。

つまり、しみる・痛むという初期サインを見逃さず、早めに歯科を受診することが、神経を残す最大のカギになるのです。

歯の神経が死ぬとどうなる?放置のリスク

強い痛みを我慢して歯髄炎を放置すると、やがて歯髄は炎症に耐えきれず死んでしまいます。

これを歯髄壊死(しずいえし)といいます。

神経が死ぬと、不思議なことに一時的に痛みが消えるため、治ったと勘違いしてしまう方がいます。

しかし実際には、死んだ歯髄が細菌の温床となり、感染が根の先からあごの骨へと広がっていきます。

その結果、歯ぐきが腫れる、膿が出る、噛むと激しく痛むといった症状が現れ、最終的には歯を残せなくなることもあります。

痛みが消えたから大丈夫、と自己判断するのは非常に危険です。

神経をそのまま放置するとどうなるかについては、詳しくは「歯の神経をそのまま放置すると」をご覧ください。

また、すでに神経が死んでしまった歯への対処については、詳しくは「神経が死んだ歯の治療」をご覧ください。

歯の神経を残す重要性とできるだけ抜かない治療

ここまで読んでいただくと、歯の神経がいかに大切な存在かがおわかりいただけたと思います。

神経を抜いた歯は寿命が短くなりやすく、将来的に歯を失うリスクが高まることがわかっています。

だからこそ、現在の歯科医療では「できるだけ神経を残す」という考え方が大切にされています。

炎症が軽い段階であれば、神経を完全には取らずに守る方法があります。

たとえば、虫歯を取り除いた際に神経の一部が露出しそうな場合、MTAセメントなどの薬剤で神経にふたをして保護する「覆髄(ふくずい)」という治療が行われることがあります。

これにより、神経を生かしたまま歯を修復できる可能性が残ります。

神経を残せるかどうかは、虫歯の深さや炎症の程度、そして受診のタイミングによって大きく変わります。

少しでも違和感を覚えたら、神経が元気なうちに歯科を受診することが、何よりの近道です。

すでに神経を失った歯への新しい選択肢「歯髄再生治療」

「もう神経を抜いてしまったから手遅れだ」とあきらめる必要はありません。

近年では、失われた歯の神経そのものを蘇らせる「歯髄再生治療」という先進的な治療が登場しています。

これは、ご自身の親知らずなどから取り出した幹細胞を利用し、神経が抜かれて空洞になった根管の中に、新しい歯髄組織を再生させる治療です。

神経が再生すれば、歯に再び栄養が届くようになり、もろくなった歯に生命力を取り戻せる可能性があります。

これまで「神経を抜いたら終わり」とされてきた常識を変える、期待の大きい治療といえます。

歯髄再生治療の詳しい内容については、詳しくは「歯髄再生治療」をご覧ください。

歯の神経に関するよくある質問

最後に、歯の神経について患者さまからよくいただく質問にお答えします。

神経を抜いた歯はどのくらいもちますか?

神経を抜いた歯の寿命は、その後のケア次第で大きく変わります。

丁寧な根管治療と適切なかぶせ物、そして定期的なメンテナンスを続ければ、長く使い続けることも十分可能です。

逆に放置すれば、再感染や破折で早期に失ってしまうこともあります。

神経を抜く治療は痛いですか?

抜髄の処置は、基本的に麻酔をしっかり効かせてから行うため、治療中に強い痛みを感じることはほとんどありません。

炎症が強い場合は麻酔が効きにくいこともありますが、その際は麻酔の量や方法を工夫して対応します。

しみるだけでも神経を抜く必要がありますか?

冷たいものが一時的にしみる程度であれば、神経を残せる可能性は十分にあります。

しみる症状の多くは、軽い炎症や知覚過敏が原因のこともあります。

自己判断で放置せず、早めに受診して原因を確かめることが大切です。

まとめ:歯の神経を守ることが歯を長持ちさせる第一歩

歯の神経(歯髄)は、栄養を届け、刺激を伝え、歯を守るという三つの役割を担う、歯にとって欠かせない組織です。

神経を抜くと痛みからは解放されますが、歯がもろくなり、変色し、トラブルに気づきにくくなるという変化が避けられません。

だからこそ、できるだけ神経を残す治療を選び、しみる・痛むといったサインを見逃さないことが、歯を長持ちさせる第一歩になります。

そして、すでに神経を失ってしまった方にも、歯髄再生治療という新しい希望があります。

歯の神経のことで不安や疑問がある方は、どうぞお気軽に赤坂さくら歯科・矯正歯科クリニックまでご相談ください。

あなたの大切な歯を一本でも多く守るために、私たちが全力でサポートいたします。

監修医師:土黒 さくら
略 歴
2014年 鹿児島大学歯学部 卒業
2014年 東京医科歯科大学 臨床研修歯科医
2015年 大型医療法人グループ歯科医院 勤務
2016年 大型医療法人グループ歯科医院 分院長就任
2018年 港区赤坂の歯科医院 勤務
2020年 赤坂さくら歯科・矯正歯科 開院
2023年 医療法人社団桜麗会設立 理事長就任
所属学会等
・日本口腔インプラント学会
・日本歯周病学会
・東京SJCD歯科スタディーグループ
・インビザライン 認定ドクター
・日本顕微鏡歯科学会

赤坂の歯医者 赤坂さくら歯科・矯正歯科
日付:
カテゴリ:医師監修コラム, 歯髄再生治療に関するコラム