歯髄再生治療は、なぜ神経を取った歯に新しい神経を作ることができるのでしょうか。
本記事では、歯髄幹細胞が神経や象牙質を再生させる仕組みを、科学的な視点からわかりやすく解説します。
仕組みを理解しておくと、治療の効果や期間をより具体的にイメージしやすくなります。
「なぜこの治療で神経が戻るのか」という疑問を持ったまま治療を受けるよりも、納得したうえで選択できる方が安心につながります。
赤坂さくら歯科・矯正歯科では、こうした再生医療の仕組みを踏まえたうえで治療をご提供しています。
専門用語が多く難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば治療の全体像はシンプルに理解できます。
歯髄幹細胞とは何か

歯髄幹細胞は、歯髄再生治療の中心となる重要な存在です。まずはその特徴を確認していきましょう。
さまざまな組織になれる「幹細胞」の一種
歯髄幹細胞は、歯髄という組織に存在する幹細胞の一種です。
幹細胞には、自分と同じ細胞を複製する能力と、複数の種類の細胞に変化する能力(分化能)が備わっています。
歯髄幹細胞は特に、神経や血管の細胞に変化しやすい性質を持つとされています。
この性質があるからこそ、失われた神経を新しく作り出す治療に応用できるのです。
他の組織の幹細胞と比べても、神経系への分化に優れている点が歯髄幹細胞の大きな特徴です。
親知らずや乳歯から採取できる理由
歯髄幹細胞は歯の内部、エナメル質や象牙質に守られた場所に存在します。
外部からのダメージを受けにくいため、質の良い状態で採取しやすいという特徴があります。
不要になった親知らずや乳歯は、こうした良質な幹細胞の供給源として活用できます。
本来は廃棄されるはずだった歯を有効活用できる点も、この治療の特徴のひとつです。
神経が再生される仕組み
歯髄幹細胞が実際にどのようなステップを経て神経を再生させるのか、順を追って見ていきましょう。
培養で細胞の数を増やす
採取した歯髄幹細胞は、そのままでは移植に十分な量がありません。
専用の設備で1〜2か月ほどかけて培養し、必要な数まで増やします。
培養が完了した細胞は、品質や安全性を確認したうえで移植に使用されます。
この培養の過程で細胞が十分に増殖しなかった場合、移植そのものが行えないこともあります。
移植後、細胞が神経や血管をつくり出す
根管治療を行った歯に、培養した歯髄幹細胞を移植します。
移植された細胞は、成長因子の働きによって血管や神経の細胞へと変化していきます。
これにより、失われていた歯髄の組織が少しずつ作り直されていきます。
移植直後にすぐ効果が現れるわけではなく、少しずつ組織が形成されていく点が特徴です。
経過観察の際は、こうした組織の再生度合いを画像や検査データで確認しながら丁寧に進めていきます。
象牙質も同時に再生される
歯髄幹細胞には、象牙質を作る細胞に変化する性質もあります。
神経の再生とあわせて、内側から象牙質が作られることで、歯全体の強度が回復していきます。
この象牙質の再生には、半年から1年程度の期間がかかるとされています。
再生の進み具合には個人差があり、歯の状態によっても期間が前後することがあります。
定期的な経過観察を続けることで、再生が順調に進んでいるかを確認できます。
仕組みを知るとわかる治療のポイント

仕組みを理解しておくと、治療期間や必要な条件についても納得しやすくなります。
なぜ時間がかかるのか
歯髄再生治療の期間が長いのは、細胞の培養と組織の再生に生物学的な時間が必要なためです。
人工物を詰める従来の治療とは異なり、体内で細胞が働く過程を待つ必要があります。
なぜ不要歯が必要なのか
歯髄幹細胞は、患者さん自身の歯からしか採取できません。
自分の細胞を使うことで拒絶反応が起こりにくく、安全性の高い治療につながっています。
仕組み上、細胞が増殖しないこともある
歯髄幹細胞の培養は、生きた細胞を扱う以上、必ず成功するとは限りません。
歯の状態や年齢などの要因によって、細胞がうまく増殖しない場合があることは、仕組みを理解するうえで知っておきたいポイントです。
成功率を左右する要因について詳しく知りたい方は「歯髄再生治療の成功率は?下がるケースとクリニック選びのポイントも解説」をご覧ください。
仕組みと成功率の関係を知っておくことで、治療への理解がより深まります。
歯髄再生治療の基本的な流れについて詳しく知りたい方は「歯の再生治療とは?メリット・デメリットと治療の流れを解説!」をご覧ください。
症例写真で見る再生の様子
仕組みを踏まえたうえで、実際の治療結果をCT画像で確認してみましょう。

治療前と、治療から6か月後を比較すると、歯髄幹細胞の移植によってデンチンブリッジ(象牙質の再生)が形成されている様子が確認できます。
これは、これまで解説してきた仕組みが実際に機能した結果を示す一例です。
仕組みに関するよくある質問
ここでは、仕組みに関して、患者様からよく寄せられる質問にお答えします。
再生した神経は元と同じように機能しますか
再生された歯髄は、痛みを感じ取る知覚機能や、歯に栄養を届ける機能を回復させることが期待されています。
すべての機能が完全に元通りになるとは限りませんが、神経がない状態と比べると、歯の健康維持において大きな違いがあります。
痛みを感じられることで、虫歯や異常の早期発見につながる点も大きなメリットです。
神経が持つ本来の役割が戻ることで、日々の歯の健康管理もしやすくなります。
他家(他人)の細胞は使えないのですか
現在の歯髄再生治療では、患者さん自身の歯から採取した細胞を用いる方法が一般的です。
他人の細胞を使う「他家移植」については、現在研究段階の技術であり、今後のさらなる研究の進展が期待されています。
現時点では実用化されていないため、いま受けられる治療は自家移植(自分自身の細胞を使う方法)が中心となっています。
象牙質だけを再生させることはできますか
歯髄幹細胞は象牙質を作る細胞にも変化するため、神経の状態によっては象牙質の再生を中心とした治療が選択されることもあります。
どちらの治療が適しているかは、歯の状態によって異なるため、検査のうえで判断されます。
気になる方は、カウンセリングの際に、自分のケースではどちらの治療が適しているか相談してみるとよいでしょう。
赤坂さくら歯科・矯正歯科での歯髄再生治療
赤坂さくら歯科・矯正歯科では、こうした仕組みを踏まえた歯髄再生治療をご提供しています。
専用のカウンセリングルームで、細胞の働きや治療の見通しについても丁寧にご説明しています。
図や画像を用いながら、培養の経過や再生の進み方を分かりやすくお伝えするよう心がけています。
仕組みを知ったうえで治療を検討したい方は、まずはお気軽にご相談ください。
専門的な内容も、わからないことがあれば遠慮なく質問していただければと思います。

監修医師:土黒 さくら
- 略 歴
- 2014年 鹿児島大学歯学部 卒業
- 2014年 東京医科歯科大学 臨床研修歯科医
- 2015年 大型医療法人グループ歯科医院 勤務
- 2016年 大型医療法人グループ歯科医院 分院長就任
- 2018年 港区赤坂の歯科医院 勤務
- 2020年 赤坂さくら歯科・矯正歯科 開院
- 2023年 医療法人社団桜麗会設立 理事長就任
- 所属学会等
- ・日本口腔インプラント学会
- ・日本歯周病学会
- ・東京SJCD歯科スタディーグループ
- ・インビザライン 認定ドクター
- ・日本顕微鏡歯科学会


