奥歯を1本失ったとき、「見えない場所だし、なくても困らないのでは」と考える方は少なくありません。けれども奥歯は、噛む力を一身に引き受ける、いわば口の中の働き手です。放っておくと、残った歯や噛み合わせ全体にじわじわと影響が広がっていきます。とはいえ、費用や手術への不安から、なかなか一歩を踏み出せない気持ちもよく分かるものでしょう。
この記事では、港区赤坂で朝7時半から診療している赤坂さくら歯科・矯正歯科が、奥歯のインプラントが必要かどうかの考え方から、費用の目安と内訳、難しいといわれる理由、そして骨が足りないと言われた場合の選択肢までを、臨床の視点を交えてお伝えします。
目次
奥歯は見えなくても噛む力の主役

奥歯がなくても見た目には分かりにくいため、つい軽く考えてしまいがちです。しかし機能の面から見ると、奥歯は前歯よりもはるかに大きな力を担っています。日本歯科医師会が紹介している調査では、奥歯にかかる噛む力は平均でおよそ59キログラム、強くかみしめると体重に匹敵するほどの力がかかると報告されています(日本歯科医師会 スポーツと歯科)。前歯のおよそ4倍にあたる大きさです。
つまり奥歯は、食べ物をすりつぶす要であると同時に、強い力を受け止める柱のような存在になります。家にたとえるなら、前歯が屋根で奥歯が柱にあたるでしょう。柱が1本抜けても家はすぐには倒れませんが、残った柱に負担が偏り、少しずつゆがみが生まれていきます。奥歯を見えないからと後回しにしにくい理由は、ここにあるのです。
奥歯を失ったまま放置すると起こること

奥歯がないまま時間が過ぎると、口の中では静かに連鎖反応が進みます。まず、空いたすき間に向かって隣の歯が傾き、噛み合っていた相手の歯(対合歯)が伸び出してくるのです。歯並び全体のバランスが崩れ、やがて噛み合わせがずれていきます。
次に問題になるのが、残った歯への負担です。奥歯が引き受けていた強い力の逃げ場がなくなり、ほかの歯に過剰な負担が集中します。その結果、健康だった歯まで傷みやすくなり、寿命を縮めてしまうおそれがあるのです。さらに、しっかり噛めないことで食べられるものが偏り、胃腸への負担や栄養の偏りにつながることも指摘されています。
見落とされがちですが、放置はお金の面でも損につながりやすいのです。歯が抜けた部分の骨は、噛む刺激を失うと少しずつ痩せていきます。骨が痩せ、傾いた歯でスペースが狭まるほど、いざインプラントを入れようとしたときに骨を増やす処置が必要になり、治療は長く高額になりがちです。早めに動くほど、治療はシンプルで負担も小さく済むでしょう。
奥歯にインプラントは必要か、それとも不要か
「奥歯のインプラントは不要」という意見を目にして、迷っている方もいるでしょう。結論から言えば、必要かどうかは奥歯の状態と全身の状況によって変わります。一律に必要とも不要とも言い切れません。
必要性が高いのは、噛み合う相手の歯が残っていて、その奥歯でしっかり噛みたい場合です。とくに食いしばりや歯ぎしりの強い方は、力の逃げ場を確保する意味でも奥歯の回復が大切になります。一方で、噛み合う相手の歯がすでに失われている場合や、全身の状態から外科手術を避けたほうがよい場合には、無理にインプラントを選ばない判断もありえます。
ここで大切なのは、不要という言葉をうのみにしないことでしょう。本当に不要なのか、それとも別の事情があるのかは、噛み合わせや骨の状態、生活背景まで含めて総合的に診断してはじめて見えてきます。自己判断で放置する前に、一度プロの目で確かめてもらう価値は十分にあるはずです。
奥歯こそインプラントが活きる場面

奥歯を補う方法には、インプラントのほかにブリッジと入れ歯があります。それぞれに長所と短所がありますが、奥歯という部位の特性を考えると、インプラントの利点が活きやすい場面が多いといえるでしょう。
ブリッジや入れ歯と比べたときの違い
ブリッジは、失った歯の両隣を削って橋をかける方法です。見た目や噛み心地は自然ですが、健康な歯を削る代償が大きく、土台にする歯にも負担がかかります。部分入れ歯は手軽で削らずに済む反面、バネのかかる歯に負担が集中し、噛む力が天然の歯ほどには出ないという弱点があります。
その点インプラントは、両隣の歯を削らず、単独で顎の骨に支えを作る方法です。強い力がかかる奥歯ほど、しっかり噛める利点が大きく感じられるでしょう。骨に直接力が伝わるため、骨が痩せるのを防ぎやすい点も見逃せません。前歯では見た目の自然さが重視されますが、奥歯ではこうした噛む機能での恩恵が前面に出てきます。
奥歯のインプラントが難しいといわれる理由
奥歯のインプラントは、前歯に比べて技術的なハードルが高いといわれます。その理由は、奥歯ならではの解剖学的な事情にあるのです。順に見ていきましょう。
上の奥歯は上顎洞が近い
上の奥歯のすぐ上には、上顎洞と呼ばれる大きな空洞があります。鼻の脇にある副鼻腔の一部です。歯を失って時間がたつと、この空洞に向かって骨が痩せ、インプラントを支える骨の高さが足りなくなりやすくなります。骨が薄いまま埋入すると上顎洞を傷つける危険があるため、慎重な診断と工夫が欠かせません。
下の奥歯は神経が近い
下の奥歯の下には、下歯槽神経という太い神経が走っています。唇や歯茎の感覚をつかさどる神経です。インプラントがこの神経に触れると、しびれや麻痺が残るおそれがあります。だからこそ、立体的に骨と神経の位置を把握できるCT検査が、下の奥歯では特に重要な意味を持つのです。
噛む力の強さと口の奥の狭さ
奥歯にかかる強い力は、インプラントにとっても厳しい条件になります。噛み合わせの設計が甘いと、過剰な力が一点に集中し、上部構造の破損やネジの緩みを招きかねません。加えて、口の奥は器具が届きにくく、大きく口を開けにくい方ではスペースの確保も課題になります。これらをクリアするには、精密な計画と経験が物をいうでしょう。
骨の高さや幅が足りないケースでも、あきらめる必要はありません。上顎の奥ではサイナスリフト(ラテラルアプローチ)やソケットリフト(クレスタルアプローチ)、骨の幅や高さを補うGBR(骨再生治療)といった方法で、土台となる骨を増やせる場合があります。治療期間は延びるものの、これまで難しいとされたケースでも噛む機能を取り戻せる可能性が広がってきました。
奥歯のインプラント費用の目安と内訳

奥歯のインプラントを検討するうえで、最も気になるのが費用でしょう。インプラントは、むし歯や歯周病の一般的な治療と違い、原則として公的保険が使えない自費診療です。そのため費用は歯科医院ごとに異なりますが、総額がどのように決まるのかを知っておくと、見積もりを正しく読み解けます。
費用は大きく、顎の骨に土台を埋める手術の費用、土台と人工歯をつなぐアバットメントの費用、そして表に見える上部構造の費用に分かれます。赤坂さくら歯科・矯正歯科の場合、奥歯であれば埋入手術が33万円、アバットメントが5万5千円、奥歯用のクラウンが16万5千円で、合計するとおよそ55万円(税込)が目安です。骨が足りずに骨造成をともなう場合は、その分の費用が加わります。
ここで知っておきたいのが、奥歯と前歯では上部構造の費用が変わる点です。当院では前歯のクラウンが22万円で、見た目の自然さがより求められる前歯のほうが高くなります。なお、インプラント治療は医療費控除の対象になることがあり、確定申告で税金の一部が戻る可能性があります。費用の心配がある方は、見積もりの段階で内訳まで確認しておくと安心でしょう。
奥歯のインプラントで知っておきたい注意点
利点の多い奥歯のインプラントですが、あらかじめ理解しておきたい注意点もあります。納得して進むために、デメリットも正直に押さえておきましょう。
第一に、先ほど触れたとおり費用が自費でまとまった額になる点です。第二に、骨と結合するのを待つ期間が必要なため、治療全体では数か月かかります。骨造成をともなえば、さらに長くなることもあります。第三に、治療後に手入れを怠ると、インプラントの周囲が細菌に感染するインプラント周囲炎を起こすおそれがある点も見逃せません。天然の歯と同じように、毎日のケアと歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせないのです。
また、糖尿病などの全身の状態や、重い歯周病がある場合には、そのコントロールが先になります。これらは決して特別なリスクではなく、事前の精密な検査と診断、そして治療後の管理によって十分に備えられるものです。注意点を正しく知ったうえで選ぶことが、長く快適に使い続けるための近道になるでしょう。
赤坂さくら歯科・矯正歯科の奥歯のインプラント
赤坂さくら歯科・矯正歯科は、赤坂駅から徒歩30秒、朝7時半からの診療という通いやすさが特徴です。難しいとされる奥歯のインプラントにも、精度を支える設備と体制で対応しています。
奥歯の治療で要となるCT検査では、デジタル歯科用CTを用いて顎の骨や上顎洞、神経の位置を立体的に把握し、シミュレーションのうえで安全な埋入位置を計画します。骨が足りない方には骨再生治療や骨造成で対応し、他院で難しいと言われた方の治療にもつなげてきました。手術法は即日インプラント、1回法、2回法の三つから、奥歯の状態に合わせて選べます。使用するインプラントはノーベルバイオケア社とストローマン社の純正品です。担当するのは日本口腔インプラント学会の専門医でEAO認定医でもある歯科医師で、緊張しやすい方には麻酔を専門に担当する歯科医師による静脈内鎮静法も用意しています。インプラント本体には10年間の長期保証を設け、治療後も長く支える体制を整えています。
奥歯のインプラントの不安は赤坂さくら歯科・矯正歯科へ相談を
奥歯は見えにくい場所にありながら、噛む力を支える大切な働き手です。失ったまま放置すると、残った歯や噛み合わせ、さらには骨の量にまで影響が広がり、時間がたつほど治療は難しく高額になりがちでしょう。必要かどうか、費用はどのくらいか、自分の骨でもできるのか、こうした疑問は一人で抱え込まず、検査にもとづいて具体的に確かめることが何よりの近道になります。
「不要かもしれない」「骨が足りないと言われた」と迷っている方も、選択肢は思っているより残されているはずです。港区赤坂の赤坂さくら歯科・矯正歯科では、精密なCT診断から骨造成、治療後の保証とメンテナンスまで、奥歯のインプラントを長く支える体制を整えています。気になる症状やご質問があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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当院の症例
60代の男性の患者様です。
左上のブリッジが歯根破折で保存不可能となり、インプラントを希望されました。
インプラントを埋入する骨の高さが足りなかったため、サイナスリフトを行い、垂直的に骨の高さを増した上でインプラントを2本埋入しました。
埋入してまもなく、噛み心地が良かったとのことで部分入れ歯が入っていた右下の欠損部もインプラントを希望され、左上と同じくインプラントによる欠損補綴を行いました。
よく噛めるようになったと喜ばれていました。






